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月: 2021年5月
メキシコは何故カラベラ(ガイコツ)を飾るのか?
メキシコの映画や街並みを見たことがある方ならきっと一度は目にするであろうガイコツの飾りやモチーフ。
メキシコ=ガイコツと言うイメージだけど、ガイコツって、正直に言うとちょっと怖い…どうしてこんなにたくさんガイコツを飾るの?怖くないの?
と不思議に思っている方もいらっしゃるかもしれません。
と言うことで今回はメキシコのカラベラ(ガイコツ)について紹介していきたいと思います。
メキシコのカラベラは「死は幸せなこと」である象徴
メキシコでよく見られるあのガイコツは「カラベラ」と呼ばれています。スペイン語では”Calavera”と書き、日本語に直訳すると「頭蓋骨」と言う意味になります。
メキシコで盛大に祝われる11月の死者の日によく飾られていますが、レストランによっては1年中カラベラの人形を飾っていたり、お土産としてカラベラ人形やカラベラが描かれた小物がたくさん売られていたりと、シーズンを問わず、メキシコの代表的なモチーフとして知られています。
カラベラの起源は、メソアメリカ文明を支配していた民族の一つであるメシカ族の時代まで遡ることができます。
カラベラは、悲しみではなく喜びの象徴とされており、来世での幸せな生活を示すために、お祝いごとをしたり、踊ったり楽器を弾いたり…といった、楽しい姿のカラベラが描かれています。
メキシコでは、亡くなった人は悲しい思い出として記憶に残るのを嫌がり、死は幸せなことであるべき、と考えられているところから、こういったカラベラの姿につながっています。
この考え方は、スペインに征服された後も残った数少ないメキシコ文化のひとつです。
カラベラは死者の日に大活躍!
メキシコ人の生活の中で1番多くカラベラが登場するシーンは、やはりなんといっても死者の日でしょう。
亡くなった人々が年に一度帰ってくるこの11月1、2日の2日間は、死者を喜んで迎え入れるため、祭壇を明るく飾りつけますが、このときに欠かせないのが、砂糖で作られたカラベラのお菓子です。
また、町中の人々がカラベラのメイクをしてお墓参りにいったり、パーティをしています。
さらに、死者の日には”Calavera literaria”と言う遊びも行われます。
死者の日の前日に、カラベラをテーマに韻を踏んだ詩を作って読み合うという遊びです。
亡くなった方や生きている人とカラベラを題材に、皮肉といたずら心を少し交えて、面白おかしく詩を書きます。
日本でいう季節に合わせた俳句に近いかもしれませんが、おもしろく書く、と言うところにもまた、メキシコ人の「死は幸せなことである」や「死者を明るく楽しく迎え入れたい」と言う気持ちが表れているのかもしれませんね。
カラベラは、社会の分裂から発生したものだった
そのように、現在はカラベラは陽気で楽しい存在、とされていますが、実はその起源は、今ほど明るい始まり方ではありませんでした。
1857年、メキシコでは社会の分裂が始まります。今も根強く残る経済的・社会的格差の問題もありましたが、それと共に問題となっていたのが”Garbanceros(ひよこ豆売り)”と呼ばれていた元農民グループです。
彼らが、古くからメキシコで大事にされている食物であるとうもろこしの販売をやめ、ひよこ豆のビジネスを始めたことがきっかけでした。
原住民の血を引いていると言う事実を拒否し、ヨーロッパからきた文化に乗り換えようとするグループの姿は、そうでない人々からするとメキシコ文化のへ裏切りと映りました。
そこから、そのグループを批判する文章とともに、グループを揶揄したカラベラの絵が添えられるようになりました。
その後、この批判の矛先は国自体や上流階級の人々に向けられ、批判と嘲笑の意味をこめて、スーツやドレスなどの上品な服を着たカラベラが、批判のコメントとともに描かれるようになったのが、カラベラの起源と言われています。
現代のカラベラには、様々な表情・形をしたカラベラがいますが、よく見てみると同じデザインのカラベラがいろんなところでモチーフに使われていることがわかります。
このカラベラは「カトリーナ」と呼ばれており、この社会の分裂からカラベラの絵を描くのが流行した時に、ホセグアダルーペポサダスと言う人物によって創られたキャラクターです。
カラベラグッズはバリエーションが豊富!お土産に大人気!
メキシコのガイコツ柄は、メキシコで死者の日に飾られるシュガースカルから
メキシコといえばガイコツ!というイメージはありませんか?
メキシコを題材にした映画などでもよくガイコツを見かけることがあると思います。
その中でも、メキシコの死者の日によく並んでいる、白いガイコツを見たことがありますか?
実はあれ、砂糖でできたお菓子なんです!
ということで今回は、メキシコの死者の日で大活躍のシュガースカルについてご紹介していきます!
メキシコの死者の日に大活躍のシュガースカル
メキシコで11月1,2日に祝われる死者の日。
日本でいうお盆のようなイベントで、年に一度、亡くなった方が現世に戻ってくる日として知られています。
2017年に公開されたディズニー映画『リメンバー・ミー』を見て死者の日を知った方も多いかもしれませんね。
「死者の日」や「ガイコツ」と聞くとなんだか怖いかもしれませんが、シュガースカルはガイコツの形をした砂糖菓子。
砂糖でできた白い顔に、ポップなカラーで表情が描かれた、かわいらしいガイコツです。
死者を明るく楽しく迎え入れるため、メキシコでは”Altar”と呼ばれる祭壇にシュガースカルを飾ります。
祭壇には死者の写真や、好きだった食べ物などを供え、パペルピカドやマリーゴールドの花で飾り付けをしますが、そこにたくさんのシュガースカルも一緒に並べられます。
ガイコツのおでこの部分には、亡くなった人の名前を書いたり、シュガースカルをプレゼントする相手の名前(生きている人でも!)を書くこともあります。
大きさは様々で、赤ちゃんの手のひらサイズのものから、大人の顔ほどの大きいものもあります。
死者の日が近づいてくると、メキシコのスーパーでは入り口から一番近いエリアに特設コーナーが設けられ、たくさんの死者の日の飾りが販売されますが、メインの商品としてたくさん店頭に並ぶのがこのシュガースカルです。
シュガースカルに使われている材料は食用なので食べることは可能ですが、死者の日のお祝いが終わってから、そのまま処分する人と、食べる人に分かれるそうです。
昔は本物の頭蓋骨を飾っていた!
スペインがアメリカ大陸を発見したのは19世紀半ばですが、それ以前の時代、メキシコでは、人間を生け贄にし、その頭蓋骨を飾って神へ捧げるものとしていました。
その後、ヨーロッパから砂糖が入ってくるようになり、本物の頭蓋骨の代わりに、砂糖でガイコツの形を作るようになったと言われています。
シュガースカルは、その文化を引き継いだものと言われており、常に存在する「死」、避けることのできないその神秘的な事象を象徴しています。
実は、シュガースカルを作る技術は、スペインからきた人々を通じて、中東から伝わったと言われています。
それがだんだんと、メキシコ先住民の考え方と融合し、現在の形となったそうです。
デコレーションが楽しいシュガースカル作り
シュガースカルを作る技術は、メキシコの中央部にあるトルーカやグアナファトなどの州の伝統工芸とされている砂糖菓子を作る技術と似ています。
材料はシンプルですが、作るには繊細な技術と忍耐力が必要です。
ガイコツの頭の部分に使われる材料は、砂糖、卵白、レモン。
まず砂糖を鍋に入れて水を加え沸騰させ、レモンを少し加えながらとろみがつくまで30分ほど煮ます。
その後、砂糖をかき混ぜ泡立て、結晶のようになったら、泥でできた型に流し込みます。
型をうまく回して、型の隅々まで砂糖をいきわたらせます。
少し時間をおいて、固まったら中の不要な砂糖をくり抜いた後に型から取り外します。
そのあと数時間乾燥させたら、シュガースカル作りで一番楽しいパート・デコレーションです。
卵白、アイシングシュガー、着色料から作られたペーストを使って、カラベラをデコレーションしていきます。
ペーストには黄色、赤、ピンク、青などいろんな色があり、全て手作業で表情を描いていきます。
また、ガイコツの目やおでこには錫(すず)の紙を使ってデコレーションしていきます。
大きさにもよりますが、シュガースカルひとつをデコレーションするのに、職人の手で大体15~20分かかるそうです。
地域によっても少しづつ違うシュガースカル
現在ではメキシコ各地で作られていますが、州によって材料が少し異なります。
例えばプエブラ州では砂糖にピーナッツを加え、オアハカ州ではハチミツを加え、他の州ではバニラを加えるところもあるそうです。
シュガースカルを作っているお店は家族経営であることが多く、世代から世代へと技術が受け継がれています。
普段は1日1,000個、死者の日が近づくと1日20,000個も作るそうで、メキシコだけでなく、アメリカやカナダ、ヨーロッパへも送られるとのことです。
メキシコを感じるシュガースカル!
メキシコと言ったら死者の日、死者の日と言ったらシュガースカル!といってもおかしくないくらい、メキシコ内では大切なシュガースカル。
シュガースカルがスーパーに並び始めると、「あぁ、もう死者の日の季節かぁ」と感じさせる、季節の風物詩にもなっています。
こんなにかわいらしい見た目なら、死者を迎え入れるイベントが楽しくなりそうです。
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